老人と狐

老人と狐

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんたちには、トナカイがとてもたくさんいて、放牧のときには、トナカイが大地を埋めつくし、この地上にはトナカイしかないのではないかと思われるほどでした。おじいさんは、若くて力があったときは、トナカイの群れの世話をきちんとしていました。でも、夏になるとおじいさんは弱ってしまい、一人でトナカイの放牧するのが難しくなってしまいました。ですから、ある日、トナカイの群れは老人のうちから逃げて行ってしまいました。おじいさんは家の周りにトナカイがいないかさがしてみましたが、だめでした。

おじいさんは、森にトナカイを探しに行きました。長い間、探し歩いて、とても疲れてしまいました。すると、突然、狐が出てきました。

「こんにちは、おじいさん!森の中で何を探しているの。」と、狐は聞きました。

「うちのトナカイがいなくなってしまったんだよ。だから、トナカイを探しているんだ。でも、わしはもうへとへとだ。しかし、とにかく探さなければ…。」

「どうですか、おじいさん。もしよかったら、トナカイ探しを手伝ってあげるわよ。」

「ああ、たのむよ。しかし、お礼に何が欲しいんだ。」

「おじいさんの草地でブルーベリーの実を摘んで食べてもいいかしら。わたしのブルーベリーの茂みは実がつかなかったの。でも、おじいさんの草地はいい土地だから、ブルーベリーの実がどっさりついているでしょ。」

おじいさんは、狐におじいさんのトナカイの群れの追ってきてもらうことにしました。そして、お礼に、おじいさんの草地のブルーベリーの実を狐に食べさせてあげることにしました。家に帰って、おじいさんはおばあさんに森での出来事を全部話しました。でも、狐は、森の中でトナカイの群れを見つけると、群れの中の一頭を食べてしまいました。そして、ブルーベリーの実も食べに行きました。ずっとこんなふうにしていたのです。狐は、おじいさんのトナカイを食べていましたが、おじいさんは、狐はトナカイの群れの放牧を手伝ってくれていると思っていました。そんなある日、おじいさんは狐に会いました。

「トナカイの群れはどうだい。」と、おじいさんは狐に聞きました。

「大丈夫よ、おじいさん!でっぷり太って、つやつやしているわ。」

「では、トナカイの群れの放牧の手伝いを続けておくれ。でも、ときどきわしのところにトナカイのことを話しに来ておくれよ。」

「わかったわ、おじいさん。そうするわ。」

狐は森の中へ走って行って、トナカイの群れを見つけると、群れの中の一頭を食べてしまいました。そして、ブルーベリーの実も食べに行きました。毎日こんなふうにしていたのです。しばらくして、狐はおじいさんのところへ走っていきました。

「わしのトナカイの群れはどうだい。」と、おじいさんは狐にききました。

「大丈夫よ、おじいさん!もっとでっぷり太ったわ。」

「よく草を食べさせて、もっと太らせておくれ。よくよく気を配っておくれよ。」

でも、こんなことが長く続きました。ある日、狐はまたおじいさんのところへ走っていきました。おじいさんは「わしのトナカイの群れはどうだい。」と、またききます。

「大丈夫よ!草をたくさん食べて太ったわ。とても大きくなったわ。」

「トナカイを見せておくれ。トナカイを追って、わしのところに来ておくれ。」と、おじいさんは言いました。

「わかったわ、おじいさん!群れを集めに行ってくるわ。すぐにここ追ってきてあげるわ。」

おじいさんはずっと待っていましたが、一日たっても、二日たっても、狐はもどってきません。それで、自分でトナカイの群れを探しに行くことにしました。途中、狐に会いました。狐はおなかいっぱいで、満足そうでした。

「狐よ、わしのトナカイの群れはどこだい。」と、おじいさんは聞きました。

「おじいさん、おじいさんとわたしのトナカイの群れは見つけられなかったの。どこかへいっちゃったのね。わたしは先に探しにいくわね。おじいさんは、あとについて来て。心配しないでね。」

狐は先に走って行って、おじいさんは狐のあとをのろのろと歩いていきました。長い間歩いて、ようやくトナカイの群れが放牧されていた草地につきました。草地は骨だらけで、狐が最後のトナカイを食べ終わっていました。おじいさんは、何が起こったのかやっとわかりましたが、もうどうしようもありません。トナカイは生き返らせられません。そして、おじいさんは

「なんて悪いやつなんだ、お前は!ただではすまぬぞ!」と、狐に大声で言いました。

狐は、逃げていきました。おじいさんは、狐のあとを追いかけましたが、追いつくことができません。おじいさんの家が見えてきました。

「おい、狐を捕まえてくれ!泥棒の狐を捕まえてくれ!」と、おじいさんはおばあさんに大声で言いました。

おばあさんはおじいさんの言うことがうまく聞き取れませんでしたが、狐はおばあさんのもう目の前まで走って来ています。

「おじいさんは、おばあさんにわたしにお礼をするようにと言ったのよ。何かきれいな飾りをわたしのしっぽに結びつけるようにとね。」と、狐は言いました。

「どの飾りのことだい。」と、おばあさんは聞きました。

「ナイフを結びつけなさいって。おじいさんがそう言ったわ。ナイフがわたしの飾りになるって。」

おばあさんがナイフを狐のしっぽに結びつけると、狐は走っていきました。そのとき、おじいさんが走ってきて、

「なぜ狐を捕まえなかったのだ。」と、おばあさんにききました。

「わたしには、おじいさんが何と言っているのか聞こえなかったんだよ。狐は、おじいさんが狐にお礼するように言っているというものだから。」

「お礼をしたのか。」

「ナイフを狐のしっぽに結びつけたよ。」

おじいさんは、狐ほどずるがしこい動物はいないと、思いました。狐はもっと先まで走って逃げました。最初は、良かったですが、そのうち、だんだんおなかがすいて来ました。そして、おなかがすいて、へとへとになってしまいました。それで、何でも少し食べなければだめだわと、狐は思いました。

すると、突然、狼が出てきました。

「こんにちは、狐さん!」

「こんにちは、狼のお兄さん!冬を越すのはどうでしたか。」

「苦しかったよ、狐さん。食べ物がない冬だったから。もう少しで死ぬところだったよ。」

すると、狼は狐のしっぽに何か光るものがついていることに気づきました。

「狐さん、お前のしっぽについているのは何だ。」

「これは飾りよ。」

「良い飾りだね。俺も同じようなものがほしくなった。僕にもしっぽがあるからな。」

狐は、狼がうらやましがっていることを知って、

「わたしの飾りはすごく良いものよ。きれいに光っているでしょ」

「狐さん、どこでそれを見つけたんだい。」

「氷におおわれた丘が見えるでしょ。わたしは、あの丘から転がり落ちたとき、この飾りがついたのよ。」

「その丘に案内してくれよ。俺も転がってみるから。」

狐は、狼を丘へ案内しました。そこは氷ででこぼこでしたが、狼は丘から転がって落ちました。

「狐さん、飾りがついたかな。」

「いえ、狼のお兄さん。もっと転がってみて。」

「どうしてしっぽの下がこんなにひりひりするんだろう。」と、狼はききました。

「見せて。あら、大きな棘が刺さっているわ。死ぬかもしれないわ。」と、狐は狼に言いました。

「狐さん、棘を抜いてくれよ。」と、狼は狐に泣いてたのみます。

「いいわ、狼のお兄さん。」と、狐は言って、ナイフを狼のしっぽの下に突き刺しました。

「おい、もっとひどくひりひりするよ。どうしてだ。」と、狼は聞きました。

「棘を抜いてあげているのよ。」と、狐は言いました。そして、狐は狼のおなかをナイフで切りさいて、狼を食べてしまいました。

狐はとてもずるいですね。人間も狼も、みんなをだまされてしまいました。